2012年12月31日月曜日

This year's most!



今年もいよいよ残り一日ですね。
ざっと色々なところの年間ベストを見たけど、内容はどれか一つのベストを見たら後はほとんど、どれも同じだから見なくてもいいかなという感じのものばかり。そんな印象。そんな中、一つ面白いベストを挙げてるなと思ったのがここ。
http://pastaprima.net/music/2012-favorites/
ボルティモアの音楽に特化(他都市のも多数含まれるけど)したブログのようで、だからかボルティモアの盤がかなりちらほらなベストだけど、なにか他と違うベストを挙げている感じがすごく新鮮。このポストでこう書かれている。「2012年は一年を通して変化、拡大、イマジネーション、そして変革の年だったよ。」そしてそれは、「ぼくにとって、ぼくの家族にとって、このブログにとってね」ごくごくパーソナルな告白なんだけど、でもそれは音楽シーン、音楽そのもの、音、人、世の中、世界、にも言えること。で、こう続く。「さらにエキサイティングなのはさ、多くのことが今年始まったってことだよね。来年もそういう感じがまだ続いていくんじゃないかな。待っててみよう」と。「でもまあこのポストの目的?は単純にぼくの今年のお気に入りを挙げるってことだよ。最初の3つは簡単に決まったけど・・・残りは、そうはいかなかった。たぶん日によって順番が変わったりするだろうね。まあ、楽しんでよ。」
・・・このブログの年間ベストを見て、これこそいわゆる「ベスト」のあり方かなって気がした。単純に知らない音楽がいっぱいあるし、いい作品もいっぱい挙げられてて、まだまだ知らないことだらけだな~って思わされたし。もっと勉強しなきゃってね。こういう年間ベストをもっとたくさん見てみたいって思うけど、それってよくばりすぎかな。でもほんと、こういうベストがもっとあちこちで見られるようになればいいのにな。
さてさて、前置きがたらたら長くなったけど、ふぃねの今年のベスト20を。



1) It is rain in my face. "It is rain in my face."

やっぱり今年の一番はブルックリンのMat JonesによるIt is rain in my face. 。もう夏頃にこのリリースを知った時点でほぼ決定してた。改めて聴いてて今年も傑作は色々あったけど、これを聴いた時に感じた気持ちは他では得られなかった。それこそがやっぱり傑作のなかの傑作だろうと思う。過去の一連の作品もあわせて聴いたけど、ほんとにIt is rain in my face./Mat Jonesの才能にはただただ驚かされた。去年1位に挙げたYouth Lagoonもそうだけど、この先をぜひとも見てみたい。そういうアーティストってあんまり居たことがない。個人的にはこれは最上級の褒め言葉のつもり。




2) Cloud "Comfort Songs"

去年もたしかCloud"Rocket"2位にしてたような・・・。万年2位みたいでなんかこの評価はやだね。正直なところ、12位の差はあってないようなものだけど、やっぱり聴いた時の感情を大事にするとこうなる・・・。来年こそはCloud1位になるような作品を作ってもらいたいなあとか思っちゃうけど、いま聴いても美しい1st "Elephant Era""Rocket""Comfort Songs"と、パーフェクトな流れで来て、来年もコンスタントにリリースしてくれるなら、きっとそれはもう間違いなく・・・!今作はPractice Room Recordsの面々が大々的に参加したまさに渾身の一枚。今、Practice Room Recordsはものすごく良い!





3) Way Yes "Walkability"
4) Way Yes "Oranjudio"

今年とにかく印象的だったのはやっぱり夏の暑い毎日。日本の、とくに東京の夏はほんとにうだるように暑くて、じとーっとして、むしむしして、ほんとにほんとに溶けそうなくらい、それはひどいもんだけど、実際暑いのすごくつらいと思う毎日だったけど、今年一番よかった季節は大好きな秋よりもやっぱりあの暑い夏の毎日だった。そんな夏、毎日を彩ってくれた音楽たち。その中でも格別に気持ちよかったのがオハイオ、コロンブスのWay Yesの音楽。まさに夏フィーリングなEPとシングルは毎日毎日何度も聴いた。あの暑い夏を思い出させる一番。




5) Fang Island "Major"

どこかで「王道ロック・アルバムの誕生」と書いたけど、まさに。マスロック(a.k.a. 複雑ロック)の申し子たり得たのに、ここまでの様変わりには驚いた。本当に。気持ちいいピアノのイントロで始まる"Kindergarten"を聴いた瞬間からきっときみは動かす手を止め、立ち止まり、ともだちの会話を制止し、聴き入ることだろう。そんですぐタイムマシンに飛び乗って朝まで遡って、それからもう一度再生ボタンに手を伸ばすはず。なんて素晴らしいんだろう!静かな朝。美しい響き。世界!予感!そして"Victorinian"で結ばれるこの輪はどこまでも人をつないでひろがり続ける。



6) The Very Best "MTMTMK"

最初、それほどまでだとはこれっぽっちも思ってなかった。そうしたら!もしもIt is rain in my face.を知らなかったら。もしもPractice Room Recordsに巡り会っていなかったら。そしてもしふぃねがマスロックバンドの変貌にがっかりしていたら。晴れ晴れしいニューカマーを流行りと一蹴していたら。今年のベストはこの2人組が間違いなく一番だったんじゃないだろうか。まあともあれWe OK We OK。きっと一番になろうとかそんなんで音楽をやってる2人じゃないから。楽しい!音楽!それでWe OK



7) Safehouse "Equinox"

Practice Room Recordsのともだちだっていうフロリダ、ウェストパームビーチのDillonKashaunの2人組。PRRが今すごくいいのはさっきも言ったとおりだけど、彼らを取り巻く、友人までもがこの素晴らしさなら、何と言っていいか。PRRAdam & Naiveのデビュー作を聴いたときと同じような感覚。美しいものを見聞きするとこうも感情が高ぶるのかっていう。a.k.a.三拍子のみなさん、もっと彼らを見習いましょうよ!



8) Bad Cello "Takes"

同じくPRR界隈のNYのアーティスト、Zeno PittarelliBad Celloの新作も驚かされました。格段の進化を遂げてる!彼らがもっと注目されない理由は一体何だろう。注目されなくても別にいいとぼくなんか思っちゃうし、彼らもそこは重視してないのかもしれないけど、それにしたってこんなにまだまだ才能が埋もれているの?アメリカ!たぶん、ゼノのこれは意欲作。で、当然そういうテンションに満ちた一作。



9) Pinback "Information Retrieved"

さて、これまでとは打って変わって、HellaLightning Boltなんかと並ぶデュオバンドにして、すでにかなりのキャリアを積んでるサンディエゴの彼ら、今は3人かな?Pinbackの新作が素晴らしい。判断材料には弱いんだけど、実は彼らの曲をアルバムで聴くのは今回が初。それでも素晴らしいと思う。ちょっとわかりやすい感じなのかな?Pinbackって元々そうだっけ?にしたってこれはいい。



10) The  Antlers "Undersea" / "Empty Castles (No Widows refracted)"

最初のはEPで、後のは新録のリミックス曲。彼らの過去の作品もきちんと聴いたことないんだけど、"Drift Dive"を聴いて(見て)から、気になって仕方ない。どうしてもっと早く聴いてなかったんだろう?こういうの大好きなのに!特にチェリスト、Brent Arnoldを招いての"Empty Castles (No Widows refracted)"は本当に、本当に、本当に!秀逸な一曲!



11) Beach Moon/Peach Moon "Wonderstanding"

冬の間に書かれた曲たちはメランコリックで、内省的。でもどこか温かい。優しく、そっと寄り添うようにそばへ。ひそかな傑作。



12) Secret Omar "Fellow Feeling"

PRRの看板バンドAdam & Naiveの最後のメンバー(勝手に)、Omarによるソロプロジェクト。長いこと、CloudSonoakTrestin EelingGlass Frog、あれあと1人誰だっけ?って思ってたら去年から曲を発表。で今年ひっそりと知らされたこの3曲の作品集は文字通り傑作。




13) Winter "Dandelions" / "Daydreaming"

PRRに晴れて仲間入りしたSamira Winter。その習作と秀作。星々の行進とでも言いたくなる"Dandelions"はとてもデモとは思えない美しさ。ぜひブラッシュアップしたものを聴いてみたい。白昼夢と言うにはあまりに稜線のはっきりした。今ぼくが考えていることがわかる?たぶんきみも考えていること。彼女がCloudとともにプレイしてるバンド、Primacy Effectで今一度プレイしたら・・・。ね?わくわくするでしょ?



14) Plain Grays "Lifeboat"

PRRが今年は本当に良い!新たにその一員になったJordanのソロプロジェクトのPlain Graysはどこまでも美しさがひろがる作品。



15) Height With Friends "Rock And Roll"

一気にがらっと雰囲気が変わって、こちらはボルティモアの通称 "小トトロ" (大トトロも後々出てくるよ)。暑い夏をクールに演出してくれた"I Can't Stand To Be Refused"、秋をよりいっそう楽しいものにしてくれた"Hard Work"を含むこのアルバムはほんとにかっこいい。そう、かっこいい!



16) Matilda Manzana "Conjuntos Cartográficos"

詳しく知らないけど、メキシコのこのトロピカリアとシューゲイズをパイナップルで割ったようなこのアルバムはベクトルこそHeightとは違えど、やっぱりかっこいい。これだから南米インディはやめられない!



17) …Al Cruzar La Calle "…Al Cruzar La Calle"

ベネズエラの女性シンガー、Linda Sjöquistによる…Al Cruzar La Calleのアルバムは、Matilda Manzanaに近いディレクションな気がするけど、こっちはストレートなフォーク作品。Lindaの歌声が本当に美しい。これは偏見になっちゃうかもしれないけど、日本、特に東京みたいにごちゃごちゃしてないから、ベネズエラで人が歌を歌うと、こうなるのかな。シンプルで、美しくて、強い。東京からはこういうの出ないだろうなあ。んー、やっぱり偏見かな、これ?笑



18) Adam & Naive "Presents, Tattoos, And Different Directions

もう4枚目になるPRRの看板バンド(=PRR自身)のアルバム。貫禄すら感じられる。個人的には"Not A Film"だけでこのアルバムはマスターピース。名曲だと思う。でもそれで終わらず、同じく名曲な"Snowed In"や、"Love And Friendship""Adam & Naive Will Live Forever"のようなインストの曲もあったり、4枚目で、貫禄も出て来て、落ち着いちゃったとかそんな印象は決してない。



19) The Walkmen "Heaven"

ここ数年、まめにリリースをはしからはしまでチェックしなくなったから、いつも取りこぼしが翌年のだいたい4月くらいまで出て来たりする。でも今年、えらいなと思うのはこのアルバムを取りこぼさなかったこと。これまで全く聴いたことなかったけど、興味本位で聴いてみて正解だった、(自分の中では)新しい分野を開拓できた一枚。食わず嫌いがいけないことを大いに感じた一枚でも。こういう感じ、いけるんだ。



20) Beat Connection "The Palace Garden"

思った以上にどっこも取り上げてないことに驚いちゃったけど、結局そういうことなのかな、と。こういう感じで正直ここまで聴いたものが今までなかったこと、今年のハイライトと言える暑い夏を彩ってくれた一枚だということ、単純にいいなと思える音楽だということ。他がどうこう云々<自分の気持ち、で、上位の作品群と照らし合わせてこの位置。でも、これ、想像以上に気持ちいい音楽だと思うけど。


以下、今年の良作をさーっと。


Dan Deacon "America"

15Heightの項で彼を小トトロ、で、大トトロも出てくると言ったけど、Danが大トトロ。で、大トトロの評価はと言うと、ちょっと期待しすぎちゃったからか、うーん・・・という感じ。この作品のリリースを知った時、相当期待してて、これは!と思ってたのが裏目に。知らずに知らずに過ごして、後で知って、おお!っていうのが理想なのかも?ただ、評価云々を抜きにして、作品を純粋に見てみれば、これはかなりのものだと思う。矛盾してるかもしれないけど、すごいアルバム。



Dana Buoy "Summer Bodies

これほど気持ちいい音楽、最近そう出会ってない!ダンスミュージックにハマってたころの、OrbitalとかFatboy Slimとかそういう類いの音楽が持つ高揚感みたいなものを、そのころハマってたときに感じてたのと同じように、もう一度そういうものを感じた作品。~のソロ、とかっていつもイマイチなものが多い気がするけど、これは別格。ベストの作品群と変わらず何度も聴いた作品。



Diamond Rings "Free Dimensional"

トロントのエレクトロポップマエストロ。キラキラ、ブリブリ、浮かれた難破なサウンドに乗るのは、激渋硬派なヴォーカル。そのギャップが魅力の一つ。彼の見た目も相俟って、なんだかものすごいものに手を出しちゃったような気にもさせられる。ポップすぎるんだけど、潔くていい。いつも気づけば聴いてる。ライブでの姿とか、思わず黄色い声が出ちゃうほど、かっこいい。



Yung Life "Yung Life"

先に紹介したブログでIt is rain in my face.に次いで2位にランクインしていたノックスヴィルのエレサイケウェーヴバンド。冒頭の"Isn't This"と、続く"Breaker"ですぐに虜に。今年は「わかりやすいもの」をよく聴いたふぃねだけど、最後の最後までわかりやすいものにヤラレてマス。


「わかりやすいもの」ということで、今年の暑い夏、とくに聴いていたのは、


POP ETC "POP ETC"
Passion Pit "Gossamer"
Kishi Bashi "151A"
Polarsets "Exotica EP"
Crocodiles "Endless Flowers"

とにかくポップでイカす"Take A Walk"から始まる"Gossamer"はさすがポップとは何ぞやをよくわかってる彼らだからこそ。"Love Is Greed"なんか、新たなバレンタインソングになっちゃうんじゃないの?てなもんだ。ミックステープの時点ではそんなに心躍らなかったPOP ETCも気持ち新たに変えたバンド名を冠した今作はとことんポップ。でもって最高にキラキラなチューンがギッシリ!きわめつけはラストの"Yoyo"!今年の夏がすぐ昨日のことのようにフラッシュバックしてマス。よくロックなんかで"B"にマジックが、みたいな話があるけど、今年の夏は"P"にマジックがあったのかも。"Exotica EP"Polarsetsといい、POP ETCPassion Pitといい、とにかく夏に聴いたのは"P"が多かった。Way Yesとあわせて、Polarsets "Exotica EP"は今年の夏とにかく何度も何度も聴いた一枚。Crocodilesはその出自のためにどうしても無視できないんだけど、今作はほんとに無視できない眩さが。キシバシくんのアルバムはとにかくキラッキラで、夏の夜を輝かしいものにしてくれたなあ。「蚊に刺された」なんてフレーズも面白かった。でも今年そんなにぼく自身は蚊に刺されなかったかな。


キラキラしてるっていうと、やっぱりチルウェイヴ勢の中でも随一の


Work Drugs "Absolute Bearing"
Work Drugs "Delta"
Work Drugs "Young Lungs"

とくに年末にかけて発表された"Delta""Young Lungs"は秀逸。"Absolute Bearing"でその才能を一気に開花させた印象だったけど、"Delta"を聴いたあとではそれさえも予兆だったんだなあと。でも"The Art Of Progress"なんかほんとに素晴らしいと思うし、"Absolute Bearing"はディレクション的なことも含めてパーフェクト!それでもやっぱりWork Drugsのアニバーサリー?的なことを祝して発表された"Dirty Dreams"を含む、"Delta"はそれを軽く上回る出来映え。タイトル曲"Delta"の美しさといったら。80年代的なのにとても現代的。懐古的でなく前衛的。ぼくはそう思う。で、同じくWork Drugsのアニバーサリー?的なことを祝して発表された"Young Lungs"。一言で言えば、今年のベストソングをリストアップしたら間違いなく10位以内に入る。毎回、曲にあわせたビジュアルイメージまで徹底していて、彼の卓越した才能を感じるには・・・いや、ごちゃごちゃ言わずに言わせてもらおう。Work Drugs最高!


もう少し、今年聴いた作品をいくつか。


Algodón Egipcio "Los Remixes de La Lucha Constante"
Algodón Egipcio "Throes + The Shine - Hoje é Festa (Algodón Egipcio Remix)"
Algodón Egipcio "Mariachi El Bronx - Revolution Girls (Algodón Egipcio Remix)"
Algodón Egipcio "Love Will Never Do (Without You) (Janet Jackson Cover)"
Algodón Egipcio "Couleur Café (cover de Serge Gainsbourg)"
Algodón Egipcio "La Espina Del Cardenche"
Algodón Egipcio "La Conducta Original"

2010年の"La Lucha Constante"も素晴らしいけど、リミックスワークも同様に素晴らしいベネズエラのChekyによるAlgodón Egipcio2012年も好作品を多く発表してました。アルバムリリース後初の新曲"La Conducta Original"はアルバムの流れも汲むグッドムードソング。ジャネットジャクソンのカバー、"Love Will Never Do (Without You)"では卓越したアレンジセンスを披露。Mariachi El Bronx"Revolution Girls"のリミックスではトロピカルでリゾート感溢れるアレンジを、Gainsbourg"Couleur Café"のカバーではボサノヴァとかジャズのような涼しさと近未来的な浮遊感を見事に融合させメロウに歌い上げ、続く新曲"La Espina Del Cardenche"ではフォークロア×トロピカリズム×エレクトロサウンドな新境地を披露、リミックスワークで培ったものがこうして一つ開花していました。今年彼のとっておきは自身の楽曲を様々なアーティストにリミックスしてもらった1st"La Lucha Constante"のリミックス盤、その名も、"Los Remixes de La Lucha Constante"MonokleEl Sueño de la Casa PropiaPachekoTorkelsenBalún、他らによるリミックスはどれも秀逸の一言で、どれも好リミックス。そんな中にさりげなくTeen Dazeが混じってるなんていう驚きも用意しつつ、特に秀逸なのはFrancisco y Maderoによるリミックス。素晴らしい。その後、今年最後の曲はThroes + The Shine"Hoje é Festa"のリミックス。いつも思うけど、Chekyは本当にリミックスが巧い。このセンスは稀有。オジェ、オジェ、オジェ、フェースターー!



Arca "Baron Libre"
Arca "Stretch 1"
Arca "Stretch 2"

今年驚いたのは、かつてNuuroという名前で活躍した若きエレクトロマエストロ、アレハンドロが故郷ベネズエラを飛び出してNYで始めたArca。彼の革新はとてつもなく、デビューEP"Baron Libre"収録の"Little Now A Lot"でのバキバキのエレクトロとヒップホップの超高次元での融合や、ドープな"Spira"でのビートの快楽に溺れさせられる様は衝撃度で言えばダントツ!でもダブステップとかポストクラシカルなんてのが流行ってる昨今じゃわりと普通?それでも衝撃的だし、革新的だと思うのは、習作的なニオイも漂わせる"Stretch 1" "Stretch 2"の二枚の作品が、ただのDJ的なダブ作品、ラップ作品に終わらず、やっぱり超高次元で混在し続けているから。しかもすごいのは、これがちゃんとポップミュージックであるということ。小難しいことを抜きにして聴いても、気持ちいい、それがArcaの最大の特徴で魅力。



Vampire Slayer "Dumb Death"
Vampire Slayer "Somos Polen (Dumb Death B Sides)"
Vampire Slayer "Psychic Hex"
Dani Shivers "Jinx"
Bandido "Electric Soul"
Sideways Heart "Xxxy EP"
Yourself In Peace "Yourself In Peace EP"
16 Beats Machine "Human Automata"
Machweo "No Way Out EP"
Sad Animals "Far EP"

広い括りで見れば、特にメキシコやチリが多いけど南米、それからロシア、北米の音楽を注意深く見てるけど、なかでもメキシコはよく気にかける。その中でかかさず追っているのが、レーザーパンクバンド、Maniqui Lazerのメンバー、Valentinが始めたネットレーベルIndianGold Records(以下IGD)のリリース。この界隈で今年リリースされたものはどれもなかなかの意欲作揃い。そのValentinのソロプロジェクトVampire Slayerが今年リリースした"Dumb Death"は世界的な電子ビートの波に押されてか、それまでの流麗なドローンアンビエントとは打って変わった跳ねるリズム、ぶっ飛ぶビートが印象的なまっすぐダブステップな作品に。そうは言っても跳ねる跳ねる、跳躍しすぎなビートはダブ~の範疇を簡単に飛び越えてしまってる。そのアウトテイク集"Somos Polen"での原点回帰×前進な衝撃もさることながら、やっぱり彼の作品では今年最後にリリースされた"Psychic Hex"は彼のセカンドソロあたりを思い起こさせるいい出来映え。テクノロジーを通過してのこれはさすが。またIGD界隈でDani Shiversが今年発表した新曲"Jinx"はスモーキーシューゲな風合いが心地良い一曲。IGDのエレクトロアンビエント番長Valentinの直系?Bandido "Electric Soul"はそれまでのレーベルのイメージをガラリと変えた一枚。バキバキなのに、メロウで・・・ス・テ・キ。Sideways Heartはそれに連なる感じの。でもこっちはもうちょっとポップ。"Morning Star"とかもう最高。Yourself In Peaceのくぐもってるのにどこか晴れやかな楽曲群は聴いていて本当に気持ちいい。16 Beats Machineはもっと早くにIGDから出て来ててもおかしくない感じ。満を持してのといった感じか。MachweoSad Animalsはそれぞれ暮れに相次いでリリース、どちらも傑作で、しかも前衛的。特に後者Sad Animals "Far EP"は本当に美しくて、傑作と呼ぶに相応しい。今後どう進化していくのか見物。



Miii "Rabbitbass EP"
fazerock ft. reddam "あの星にのせて"
PR0P0SE "PR0P0SE"
Avec Avec "おしえて"

漫画にハマったことが音楽に影響した一番の功績は、西村ツチカ→オノマトペ大臣の音楽との巡り会い、だと思う。その流れでMaltine Recordsのリリースはちょくちょく聴いてるんだけど、今年聴いた4作品はどれも個性派揃い。メロウすぎ、スウィンギンすぎ、なAvec Avecのインパクトは強烈!超""バッキバキなMiii"Rabbitbass EP"はうさぎの跳躍力は軽く凌駕してる凄まじさ。こんなブリブリなエレクトロいつ以来だ、聴いたの?fazerock "あの星にのせて"は今年一番の日本語ソング。切なあー。綺麗~。で、大臣、最後に聴かせてくれました。PR0P0SE "PR0P0SE"はオノマトペ大臣の変名プロジェクト。"プロポーズ feat. choochoogatagoto"は愉快痛快、ステキラップ。雨の日が楽しくなるー!相変わらず抜群のセンスで紡がれる歌物語はどっぷりハマること間違いナシ!


以下今年他にこんなの聴いたリストを。

Math The Band "Get Real"
Motorama "Calendar"
NRKTK "Disappointment Of The Year"
TV Girl "The Wild, The Innocent, The TV Shuffle"
Granit "Aresta"
Francisco y Madero "Love Songs for Dating"
Capullo "Testigos Del Fin Del Mundo"
Glass Frog "Blue Fog"
City Museum "Our Roofs"
Practice Room Records "Puddles (Spring Compilation #1)"
Ahleuchatistas "Heads Full Of Poison"
Chet Faker "Thinking In Textures"
Fiveng "It Don't Mean Shit"
Ineveryroom "Ineveryroom" (2010)
Jacober "Water Karaoke"
Little Ethiopia "Monday EP"
Lar Kaye "Lar Kaye"
Liars "WIXIW"
Ella Tiene Dos Androides "El Mundo Seguirá Sin Nosotros"
Local Natives "Gorilla Manor" (2009)
Local Natives "Breakers"
Menomena "Moms"
Micah Josiah "Circles"
Shinamo Moki "For You"
Teen Daze "All Of Us, Together"
Why? "Sod In The Seed"
Why? "Mumps, Etc."


最後に3枚、今年の注目作を紹介して今年のベストを締めマス。



Familjen "Allt På Rött"

スウェーデンのエレクトロポップを奏でるFamiljenはヒネリのきいたポップネスが愉快。前作がシングルにもなった"Man Ser Det Från Månen"がグッドソングすぎたのか、アルバムが思ってた以上には感じられなかっただけにアルバムは・・・と引き気味に聴いてみたら今作は化けた!いいじゃないか!とは言えやっぱりシングル"Vi Va Dom"のポップさが今回も一番。David Guettaよりはこっちを押したい、かな?



Yeasayer "Fragrant World"

ここまで前2作から作風をガラリと変えて、しかも、革新的であり続け、さらにあわよくばメインストリームに躍り出ようという意欲もきちんと感じられるのがYeasayer3rd "Fragrant World"。世界的なインディ×R&Bな流れをバッチリ受け止めてるアルバム。キシバシ君が参加してるという嬉しいサプライズも。特に終盤の"Damaged Goods""Folk Hero Schtick""Glass Of The Microscope"の流れは文句なし!今年最も驚かされたアルバムで、最も狂喜したアルバム。



Human Tetris "Happy Way In The Maze Of Rebirth

今年のベストアルバムをまとめるのに、どうしてもこのアルバムで締めたかった。ベスト20の作品群と何ら遜色ない傑作。EPやシングルを何枚かリリースしてきて、遂に届いたフルアルバムはパンクとインディロックの素敵な邂逅。このロシアの新しい風はどこまでもさわやかに心を吹き抜けていく。優しく、そして力強く。"Silver Tears"は今年の冬を代表するベストソング。しかもこれがすでに今年の初めに出ていたっていうことはとても大きな意味を持ってる。そして、"Brotherhood"で締められるこの作品は聴いていたその時その時も様々な感情をもたらしてくれたけどいつでも聴けば、すぐさまそんな感情たちを思い出すことが出来る。


2012年、ここ数年で特に聴く音楽が減ったけど、でも、気づけば素敵な音楽に囲まれてました。

ありがとう!さようなら!そして、また。

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