昨年は洋楽(USインディ)も邦楽(主にJ-POP)もかなりわちゃわちゃしていた年だったなと思います。とりわけ邦楽。そのわちゃわちゃ具合がもう、わけわかんないくらい。そんな中でもちゃんといいものはあって、特に邦楽ではそのいいものが実に多様でした。そんな中から、FUINEがいいものと思うもの、という裏設定みたいなものはありますが、基本的にはここに挙げた30枚は心底素晴らしい作品群だと思います。ただ、いわゆるオリコンだとか、某有名レコードショップだとか、その他、影響力があるようなメディア等々が見たら、なんだこのとっちらかったベストは!と思うかもしれませんが、はっきり言って、昨年一年間、邦楽を相当量端から端まで聴いた身としては、これこそ、今の日本の音楽シーン(そもそも、その全てをもってしてシーンとは決して言えないけれど)の現状じゃないかな、と。つまり、かなり多様な音楽が存在していて、そのどれもがとても面白くて、でもよく見てみると、ナード(/或いはギーク)・カルチャーがけっこう主流になりつつあって……というような、そんな感じなのがいまの日本の音楽シーンかな、と。
1、環ROY『ラッキー』
で、その日本の音楽の中で最も耳を開いてくれたのが、このアルバム。とにかく、ここまで日本語ヒップ・ホップで素晴らしいと思えたのはたぶん初めて。昨年出会った音楽の中でいちばんの輝き。日々を刺激的に演出してくれることもある音楽だけど、そんな日々の日常感(それ自体)がここではすごく刺激的。
2、後藤まりこ『m@u』
ミドリ時代からずっとこのひとの音楽を聴いてきたけど、これほどまでに自由で、楽しくて、かっこよくて、美しい音楽って、今までなかったと思う。それはミドリの音楽に限らず。ここでの彼女はまさに羽ばたく蝶。それは儚くもあるのかもしれないけれど、それでもこの刹那、ここで鳴っている音楽を聴けたことが本当によかった。
3、Wienners『蒼天ディライト/ドリームビート』
昨年、リリースはこのメジャー・デビュー・シングルのみだったけど、それがどうしたどっこい!この快楽祭りコアはとにかく聴いていて楽しくなっちゃう曲。メジャーなんてほんとうどうでもいいけど、こういうバンドがメジャー・デビューし、さらにJ-POPとして聴かれているんだとしたら、本当に今の日本て幸せだと思う。
4、でんぱ組.inc『W.W.D』
とにかく昨年は、でんぱ組に尽きた年だったようにも思う。一年の頭にこの曲を知ってから年末まで、一年通してその動向を追ったのはでんぱ組くらいだと思う。アイドル事情には疎いし、ましてやアキバ事情なんてもっと疎い。まさに聴く態勢としても「マイナスからのスタート」だったにも関わらず、たぶん一年が終わる頃には、アイドル事情だったり、アキバ事情だったりにそれとなく通じるようになっていて。この曲と出会ったことが、ここまで音楽体験を変えちゃうなんて。『でんでんぱっしょん』でも『W.W.D II』でも『WORLD WIDE DEMPA』でもなくこれなのは、やっぱりここから色々始まったっていうのがあるから。2013年超重要作品のひとつ。
5、茅原実里『境界の彼方』
昨年は、所属レーベルから離れるという大きな決断をした年でもあった彼女。ライトノベル原作で、京都アニメーション制作のアニメの主題歌。昨年リリースの5作目のアルバムよりもやっぱりこの曲。アニソンとしてはもとより、純粋にポップ・ミュージックとしても素晴らしい曲。
6、Czecho No Republic『NEVERLAND』
USインディにたいして、JPインディというもの(いわゆるインディ・ミュージックという意味ではすでにそういうものはあるけど、いわゆるUSインディのような日本のインディ・ミュージック)が、もしもこの先出てくるとしたら、間違いなくこのバンドはそのシーンの中心的存在になるだろうと思う。
7、ねごと『シンクロマニカ』
日本のポップ・ミュージックって常に、かっこいいガールズ(/女性)バンドがいるものだけど、このバンドはその系譜の中でも別格じゃないかと。可愛い容姿からは想像もできないほどパワフルでダイナミックな演奏もすごいけど、このポップ・センスはなかなかない感じ。昨年同じくリリースされたアルバム『5』の楽曲群も素晴らしかったけど、なんといってもこれ。
8、二階堂和美『いのちの記憶』
もうあえて何も言わなくても。そもそも、すでに絶大な評価を得ているひとだと言っても決して過言じゃない。そんな彼女が大抜擢となったジブリ作品『かぐや姫の物語』の主題歌。美しい。とにかく美しい。映画を見る前からこの曲を聴いて感動していたけど、映画のあとではまた違った意味が見えたりもして、さらに感動。ぜひ映画を見て、そして聴いてもらいたい歌。
9、Nothing's Carved In Stone『REVOLT』
これまた、日本が、日本のJ-POPが幸せだなと思える作品。こんなかっこいい音楽がいわゆるJ-POPとして受け入れられてるとしたら云々。日本語題の曲が何曲か収録されているんだけど、それがもうかっこいいのなんのって!いわゆる日本的なロック、のはずなのに、どこかUSエモに通じるものも感じられたりして、そんなところも面白い。
10、みみめめMIMI『センチメンタルラブ』
J-POPの新時代の幕開けを高らかに響かせた曲、だと思う。とにかく「J-POP」なのに、どこか違う。でも何が違うのか明確には言えないんだけど。そのこたえはきっと、もう間もなくリリースされる『瞬間リアリティ』でわかるのかな?それとも、こたえはもう少し先までしまってあるのかな?
11、おおたえみり『ルネッサンス』
12、澤野弘之『キルラキル』
13、小松未可子『虹の約束』
14、Yun*chi『Your song*』
15、ZAQ『エキストラレボリューション』
16、[Champagne]『Me No Do Karate.』
17、BiS『Fly/Hi』
18、BABYMETAL『メギツネ』
19、AZUMA HITOMI『フォトン』
20、日笠陽子『Glamorous Songs』
21、きゃりーぱみゅぱみゅ『にんじゃりばんばん』
22、赤い公園『公園デビュー』
23、泉まくら『マイルーム・マイステージ』
25、Perfume『未来のミュージアム』
26、livetune『Take Your Way』
28、Linked Horizon『自由への進撃』
29、さよならポニーテール『青春ファンタジア』
30、大森靖子と来来来チーム『ポイドル』
11から以下を簡単に。おおたえみりはとにかくビョーク激似な容姿も驚いたけど、もっと驚かされたのは、彼女の歌。なにこれ?未だによくわからないけど、とにかく、なにかすごいものをリアルタイムで聴いてるという実感だけははっきりと。澤野弘之は『進撃の巨人』のサウンドトラックも手掛けていて、そっちもかっこいいんだけど、やっぱり直近の作品で、軽々その上をいったこっち。ZAQの活躍ぶりも昨年印象的だったけど、その中でも異色のこれは特に面白かった。BiS、BABYMETALは本当にわけわかんないくらい多様なアイドルの中にあって、いろんなもの、ことを込み込みでいいと思えた作品。ボカロPの隆盛も昨年象徴的なトピックだった。で、八王子Pのアルバムはエレクトロ・ミュージックとしてのクオリティがヤバい。『未来のミュージアム』は、ぱみゅぱみゅじゃなくてパフュームが歌ったというところが重要!セカオワFukaseくんの声は本当に稀有で、『Take Your Way』での少年性がもうとにかくすごい!ChouChoもやっぱり、茅原実里と同じでアルバムよりもシングルのこっちが素晴らしかった。『自由への進撃』は紅白でのステージも思わず、じっと魅入ってしまうくらいかっこよかった。こういうアニソンって久々だし、これが大ヒットしたのもすごく面白かった。さよポニは、パスピエやbómi、ハナエ、少し違うけどゲスの極み乙女。なんかの、確かに印象的であった作品群よりも、やっぱりこっちっていうダントツ感が。単純にいいもんこのアルバム。大森靖子は『絶対少女』や、下北の教会でのフィールド・レコーディング的な作品とか、何かと話題になり、印象的だった作品を多発した年だったけど、サイケデリア爆発の、このコラボ・ワークが面白かった。
昨年一年通して日本の音楽を聴いていて思ったことは、とにかくリリース・ペース(サイクル)が尋常じゃないなって!特にアイドルとかに顕著だけど、とにかくシングル!シングル!シングル!で、さらにシングル!シングル!そして、やっとアルバム!みたいなリリースがとにかく日本のポップ・ミュージック全体にあるな、と。だから結果、アルバムは毎回、毎回、ベスト・アルバム的で、それって、週刊誌なり月刊誌なりに掲載されて、やがて何話かまとまったら単行本になる、っていう漫画の状況とすごく似てて(ていうか一緒だよね?)。だからすでに、アルバムが出た時には既聴感がハンパなくて。あと、シングルがもう何通りも何通りもあったりとか、そういうのも、ああ今ってそうなんだ、って。
あと、日本の音楽についての情報発信をしているインターネットのメディア、雑誌等を見てて思ったけど、日本の音楽を取り巻く状況がこうなってくると、もうディスク・ガイドかレビューで事足りるなって。読むより聴くことのほうが早く来るんだから、ざっくり今何がある、今は何が並ぶ、みたいな、時々のリリース情報だけ並んでればほんとに事足りちゃうのが今の日本の音楽と、その周りの感じかなー、と。
もっとおもしろい作品が他にもいっぱいあったけど、2013年、印象的だったのはこんな感じ。
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